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高松高等裁判所 昭和36年(ラ)24号 決定 1961年10月18日

抗告人 旭建設株式会社 代表者 取締役 大森茂樹

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

抗告人は「原決定を取消す。債権者の申請を却下する。」との裁判を求め、その理由は要するに、原決定は抗告人名義の電話加入権を債権者松本達子に譲渡することを命じたが、電話加入権の譲渡は公衆電気通信法第三八条第一項により第三債務者たる日本電信電話公社の承認がなければその効力のないものであるから(この点は農地の競売に当り農地法所定の適格者でなければ競買申出をなし得ないのと同様である。)右公社の承認なくしてなされた右決定は違法なものであるというにある。

よつて案ずるには、電話加入権の譲渡は、それが任意譲渡の場合には公衆電気通信法第三八条第一項により公社の承認が必要であることは所論の通りであるが、公社が右承認を拒否できるのは同条第二項所定の場合に限られ、その性質上、農地法に基く農地の譲渡に関する制限とその軌を一にするものではなく、電話加入権は元来譲渡性を有する債権なのであるから、民事訴訟法に基く譲渡命令等強制譲渡の場合には、他に特別な法定の事由がある場合を除いては、公社はその譲渡を承認し、電話加入権名義を変更する義務を免れ得ないものというべきであり、譲渡命令をなす場合に予め公社の承認を必要とするものではない。従つて事前に公社の承認がなかつたことを理由に本件譲渡命令が違法であるとの抗告人の主張は理由がない。

その他一件記録を精査しても原決定には、これを取消すべき違法な点があることを発見することはできない。よつて、本件抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用につき民事訴訟法第八九条により、主文の通り決定する。

(裁判長裁判官 渡辺進 裁判官 水上東作 裁判官 石井玄)

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